人材育成セミナー・ビジョンシーク株式会社

スキルの前にマインド強化

ビジョンシーク㈱パートナー講師 細井 成

◇人の成長の欠かせないもの
人材育成の世界では、人の成長に欠かせない要素として、「知識・スキル・マインド」の3つがよく挙げられます。
これら3つはいずれも重要ですし、バランス良く増やしたり、伸ばしたり、育んだりすることが求められるでしょう。

◇まず、マインド
私自身の経験から、その中でも最も重要なのは、マインド(心構え)だと思っています。なぜなら、マインドがセットされていない状態で、いくら知識やスキルを流し込んでも、ザルに水を流すように、素通りしてしまうからです。
また、知識やスキルを習得しよう、というモチベーションが持続しないからです。

◇多くの研修ではマインドセットから入る。
研修の多くは、「なぜ、それを学ぶ必要があるのか」というマインドセットから入ります。ここで、「そうだよな、確かに必要だよなぁ」と納得するか否かが、その後のセッションの成果に大きく関わってきます。

◇例えば、管理職の階層研修では、
「役割の認識」というセッションは必須です。自身が管理職として、なぜ役割を果たす必要があるのか(WHY)、その役割を果たすために必要な知識やスキルは何なのか(WHAT)、そしてそれはどうすれば身につくのか(HOW)を理解することから始めるのです。

◇例えば、プレゼンテーションスキルの研修では、
「プレゼンターの心構え」というセッションになります。「自分が伝えたいこと」と「相手が聞きたいこと」の接点を伝えること、プレゼンは「相手へのプレゼントである」ことなどを理解します。スキルだけを学んでも、“ただのおしゃべり”になってしまいます。

◇例えば、コーチングスキルの研修では、
「部下育成マインド」というセッションになります。
「部下の成長は自分にとってどんな意義があるのか」や「部下のキャリアまで考えて指導すること」を理解してから、スキル習得のセッションに入っていきます。スキルだけを学んでも、“ただのおせっかいオジサン”になってしまいます。

◇例えば、ファシリテーションスキルの研修では、
「ファシリテーターマインド」というセッションになります。
「チームの成果を最大化する」ために「参加者の可能性や納得感を引き出す」ことの意義・重要性を理解することから始めるのです。
スキルだけを学んでも、“ただの仕切り屋”になってしまいます。

◇“やるやる詐欺”や“やらない詐欺”に陥らないために
人材育成の業界に長くいると、非常に多くの方が、“やるやる詐欺”をしてしまっている状況を目の当たりにします。
そもそも、知識やスキルは手段です。それを活かして、誰かに、または組織に、何らかの貢献をすることが目的なはずです。
そして、その対価として報酬を得る、そういう図式なはずです。でも、知識・スキルを習得しても、それを活かそうとしない。そして、また、次の違う勉強を始める・・・というパターンです。
チェーンソーの使い方を習ったけど、木を切ったことはない。次に、草刈り機の使い方を習った、でも草を刈ったことはない。そんな感じです。
道具は増えるけど、一向に前に進まない。
いつかやる、いつかやる、といって、結局やらないから“やるやる詐欺”です。

◇または、そもそも知識・スキルの習得もしない。
ある不動産仲介会社で実際に起こっていることですが、若手社員の宅建資格取得率が極端に低いと人事担当者が嘆いていました。
不動産業に身を置くものにとって、宅建の資格は多大なメリットがあります。多くの社員が資格を持つことは、企業の信頼にもつながります。でも、そんな“マスト”とも言える資格を取らないという“やらない詐欺”が横行しているというのです。

◇“やるやる詐欺”も“やらない詐欺”も根っこは同じ
なぜ、その知識・スキルを身につける必要があるのか?という、マインドができていないから。これに尽きると思います。

◇マインドができれば、人は“勝手”に学び出す。
逆に、マインドが整えば、知識やスキルの習得に積極的になります。効果的・効率的に学び出すでしょう。

◇特に、何か新しいことを始めるときは「なぜ、それをやるのか?」を明確にすること。それが、動き出し、動き続けるための強力なエンジンになります。
「周りがやってるから」とか「上司に言われたから」とか「世間の流れだから」とか、そういう理由だけで仕方なく始めても、効果はほとんど期待できないのです。